建設業許可が必要になるのはどんな工事?金額・工事内容・契約方法の判断基準を解説
建設業許可の要否は、見積書の金額だけでは決まりません。工事内容、許可業種、税込の請負代金、支給材料、契約の分け方まで、実態に即して確認する必要があります。
建設業者様から見れば、普段請け負っている仕事が「建設業許可の必要な工事」に当たるかどうかは、非常に重要な問題です。
「500万円未満なら許可はいらない」
「材料代を除けば500万円未満になる」
「契約を二つに分ければ大丈夫ではないか」
「元請から頼まれた下請工事も対象になるのか」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から申し上げると、建設業許可が必要かどうかは、単純に見積書の工事代金だけを見て判断することはできません。
次の順番で確認する必要があります。
- その仕事が建設業法上の「建設工事」に当たるか
- どの業種の建設工事に当たるか
- 1件の請負代金が軽微な建設工事の範囲内か
- 材料費、消費税、契約分割などを正しく計算しているか
- 建設業許可以外の登録や届出が必要ではないか
この記事では、建設業許可が必要になる工事の判断基準を、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
私は、あきる野市役所で39年間、さまざまな行政実務に携わってきました。行政手続では、表面的な名称だけでなく、実際の契約内容や業務の実態を確認することが大切です。
建設業許可についても、「工事という名前が付いているか」だけではなく、実際に何を請け負い、どのような方法で施工するのかを整理して判断する必要があります。
- 建設工事を請け負って営業する場合は、原則として許可が必要
- 最初に、その仕事が「建設工事」かを確認する
- 建築一式工事以外は500万円未満が軽微な建設工事
- 建築一式工事には別の基準がある
- 500万円の判断には消費税を含める
- 発注者から支給される材料も加算する
- 一つの工事を分割しても、原則として合計額で判断する
- 元請工事だけでなく下請工事も対象になる
- 常用契約や人工出しも実態を確認する
- 許可を持っていても業種が違えば請け負えない場合がある
- 軽微な工事でも別の登録や届出が必要な場合がある
- 建設業許可が必要かを確認する5つの手順
- 元請から許可取得を求められることもある
- 判断が難しい工事は契約前の確認が大切
- まとめ
- 許認可手続きでお困りの方へ
建設工事を請け負って営業する場合は、原則として許可が必要
建設業法では、元請、下請などの名義を問わず、建設工事の完成を請け負う営業を「建設業」としています。
そのため、公共工事か民間工事か、元請か下請か、法人か個人事業主かを問わず、建設工事を請け負って営業する場合は、原則として建設業許可が必要です。
ただし、例外として「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、建設業許可を受けなくても営業できます。
国土交通省も、建設工事の完成を請け負って営業する場合には、公共・民間を問わず許可が必要であり、軽微な建設工事だけを請け負う場合を例外としています。
ここで注意したいのは、「小規模な会社だから許可が不要」「下請専門だから不要」という制度ではないことです。
一人親方や個人事業主であっても、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負うのであれば、該当する業種の建設業許可が必要です。
最初に、その仕事が「建設工事」かを確認する
建設業許可が必要かを判断する最初のポイントは、その仕事が建設業法上の建設工事に当たるかどうかです。
建設工事とは、土木建築に関する工事で、建設業法上は29種類に分けられています。
たとえば、次のような仕事は、一般的に建設工事に該当します。
- 建物の新築、増築、改築
- 内装の仕上げや間仕切りの設置
- 屋根のふき替え
- 外壁の塗装
- 給排水設備や空調設備の設置
- 電気設備や照明設備の設置
- 足場の組立て
- 外構、造成、土留め工事
- 舗装工事
- 建物や工作物の解体
一方で、物品を販売するだけの契約や、機器を運搬するだけの業務、清掃・保守点検のみの業務などは、建設工事に当たらないことがあります。
ただし、契約書の名称が「売買契約」や「業務委託契約」になっていても、実態として設備の設置や取付けまで完成させることを請け負っていれば、建設工事に該当する可能性があります。
東京都の手引でも、単なる物品販売は請負に当たらない一方、物品の販売とともに建設工事の完成を請け負う契約であれば、建設業に該当する場合があると説明されています。
要点:機器販売と設置工事をセットで受注する場合
判断に迷いやすいのが、エアコン、給湯器、厨房設備、太陽光発電設備、機械設備などを販売し、その設置工事も行うケースです。
たとえば、次の契約を考えてみます。
- 機器本体代 450万円
- 配管・設置工事代 80万円
- 合計 530万円
「実際の工事代は80万円だから、建設業許可は不要」と考えてしまうかもしれません。
しかし、機器の販売と設置工事が一体となった契約であり、受注者が設備を使用できる状態まで完成させることを請け負っている場合は、機器代を含めた契約全体が判断対象になる可能性があります。
契約書や見積書の項目を分けているだけで、当然に機器代を除外できるわけではありません。
契約の名称や請求書の記載方法だけでなく、発注者に対して何を完成させる約束なのかを確認することが重要です。
建築一式工事以外は500万円未満が軽微な建設工事
建築一式工事以外の専門工事では、1件の請負代金が消費税込みで500万円未満であれば、軽微な建設工事に該当します。
したがって、専門工事では次のように判断します。
- 499万9,999円以下:原則として軽微な建設工事
- 500万円以上:建設業許可が必要
建設工事の請負代金が500万円ちょうどの場合は、「500万円未満」には含まれないため、該当業種の建設業許可が必要です。
「500万円以下」ではなく、「500万円未満」である点に注意してください。
対象となる専門工事には、たとえば次のようなものがあります。
- 大工工事
- 左官工事
- とび・土工・コンクリート工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 管工事
- タイル・れんが・ブロック工事
- 鋼構造物工事
- 鉄筋工事
- 舗装工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械器具設置工事
- 電気通信工事
- 解体工事
建設業許可は業種別に取得する制度です。
したがって、何らかの建設業許可を持っていれば、すべての工事を金額に関係なく請け負えるわけではありません。請け負おうとする工事に対応する許可業種を取得しているかも確認する必要があります。
29業種の分類については、建設業許可は29業種|どの業種で申請するかを工事内容別に解説で詳しく説明しています。
建築一式工事には別の基準がある
建築一式工事の場合は、次のいずれかに該当すれば軽微な建設工事として扱われます。
- 1件の請負代金が消費税込みで1,500万円未満
- 延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
ここでいう木造住宅工事は、主要構造部が木造で、住宅、共同住宅または店舗等との併用住宅のうち、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供する建物に関する工事をいいます。
したがって、延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事であれば、請負代金が1,500万円以上であっても、建設業法上の軽微な建設工事に該当することになります。
ただし、「建築一式工事」とは、住宅に関係する工事をすべて含む名称ではありません。
建築一式工事は、原則として元請業者の立場で、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事をいいます。
屋根のふき替えだけ、内装工事だけ、塗装工事だけといった専門工事を請け負う場合は、建築一式工事ではなく、それぞれ屋根工事、内装仕上工事、塗装工事などとして判断します。
「住宅全体に関係する工事だから建築一式工事として1,500万円未満まで許可不要」と判断することはできません。
500万円の判断には消費税を含める
軽微な建設工事に該当するかを確認するときは、消費税と地方消費税を含めた金額で判断します。
たとえば、税抜きの工事価格が470万円の場合、消費税率を10%として計算すると、税込金額は517万円です。
この場合、税抜金額は500万円未満ですが、税込金額が500万円以上であるため、専門工事を請け負うには原則として建設業許可が必要です。
見積書を税抜きで作成している事業者様は、判断時に必ず税込金額へ置き換えて確認してください。
500万円基準の計算方法については、建設業許可は500万円以上で必要|「500万円の壁」を税込・材料費込みでわかりやすく解説も併せてご確認ください。
発注者から支給される材料も加算する
発注者が材料を購入し、施工業者へ無償で支給する場合も注意が必要です。
建設業許可の要否を判断するときは、その材料が工事に使用される注文者支給材料に当たる場合、請負代金に材料の市場価格を加算します。運送費が必要な場合には、運送費も加算して判断します。
たとえば、次のような工事です。
- 施工業者が受け取る工事代金 350万円
- 発注者から支給される設備の市場価格 180万円
- 合計 530万円
発注者から支給される設備が、その工事に使用される注文者支給材料に当たる場合、施工業者に支払われる金額は350万円でも、支給材料を加えると530万円になります。
そのため、建築一式工事以外の専門工事であれば、原則として該当業種の建設業許可が必要です。
「自社で材料を仕入れていない」「材料代は発注者が直接支払った」という理由だけで、材料費を除外することはできません。東京都の手引でも、注文者が材料を提供する場合には、その市場価格や運送費を請負代金に加えるとされています。
一つの工事を分割しても、原則として合計額で判断する
一つの工事を複数の契約書や注文書に分けた場合も、原則として契約金額を合計して判断します。
たとえば、同じ建物で、同じ時期に行う工事を次のように分けたとします。
- 第1期工事 300万円
- 第2期工事 280万円
- 合計 580万円
形式上はそれぞれ500万円未満ですが、実態として一つの工事であれば、合計580万円の工事として判断される可能性があります。
契約を分ける正当な理由があり、工事場所、工期、目的などが明らかに異なる場合は、別工事として判断されることもあります。
しかし、「許可が必要になる金額を避けるため」という理由だけで契約を分割することは認められません。
判断に迷う場合は、まず最新の許可行政庁の手引を確認します。そのうえで、工事内容、工期、施工場所、発注者、見積書の構成などを整理し、必要に応じて許可行政庁へ事前相談しながら、契約内容と施工実態に即して判断することが大切です。
元請工事だけでなく下請工事も対象になる
建設業許可が必要かどうかは、元請工事か下請工事かによって変わるものではありません。
建設業法上の「建設業」は、元請、下請その他の名義を問わず、建設工事の完成を請け負う営業です。
したがって、元請業者から依頼された下請工事であっても、1件の請負金額が軽微な建設工事の範囲を超えれば、下請業者にも該当業種の建設業許可が必要です。
たとえば、元請業者から600万円の内装工事を一括して請け負う場合、下請工事であっても、内装仕上工事業の許可が必要になるのが原則です。
「元請業者が建設業許可を持っているから、下請業者は許可がなくてもよい」ということにはなりません。
常用契約や人工出しも実態を確認する
作業員の日数や人数に応じて代金を計算する「常用契約」や、いわゆる「人工出し」についても注意が必要です。
実態が単なる労働者の派遣や応援なのか、それとも一定範囲の建設工事を完成させる請負なのかによって、建設業法上の扱いが変わります。
契約書に「常用」「応援」「手間請け」などと書かれていても、一定の工事範囲を任され、施工方法や作業員の配置を自社で管理し、仕事を完成させる責任を負っているのであれば、建設工事の請負と判断される可能性があります。
また、作業員を相手方の指揮命令下で働かせる形になれば、建設業法だけでなく、労働者派遣法や職業安定法など、別の法令上の問題が生じる可能性もあります。
契約名称だけで判断せず、誰が作業員へ指示を出すのか、誰が施工責任を負うのか、完成すべき仕事が定められているかを確認することが必要です。
許可を持っていても業種が違えば請け負えない場合がある
建設業許可をすでに取得している事業者様も注意が必要です。
建設業許可は29の業種ごとに与えられるため、取得している許可と、実際に請け負う工事の業種が一致していなければなりません。
たとえば、建築一式工事の許可を持っていても、500万円以上の内装仕上工事を専門工事として単独で請け負うためには、原則として内装仕上工事業の許可が必要です。
同様に、土木一式工事の許可を持っているだけで、500万円以上の舗装工事や造園工事などを自由に単独受注できるわけではありません。
一式工事の許可は、すべての専門工事を包括する万能の許可ではないという点が重要です。東京都の手引でも、一式工事業の許可だけでは、軽微ではない専門工事を単独で請け負うことはできないと説明されています。
軽微な工事でも別の登録や届出が必要な場合がある
建設業許可が不要な軽微な建設工事であっても、何の手続もなく営業できるとは限りません。
工事内容によっては、別の法律に基づく登録、届出または通知が必要です。
代表的なものとして、次のような制度があります。
- 電気工事業を営む場合の登録、届出または通知
- 解体工事を行う場合の解体工事業者登録
- 浄化槽工事を行う場合の浄化槽工事業者登録または届出
電気工事業については、建設業許可を持っているかどうか、一般用電気工作物等と自家用電気工作物のどちらを扱うかなどにより、必要となる手続が異なります。
建設業許可を持たずに一般用電気工作物等に関する電気工事業を営む場合は、原則として登録が必要です。建設業許可を受けた事業者が電気工事業を営む場合も、「みなし登録電気工事業者」として開始届出などが必要になります。
解体工事を業として行う場合は、原則として、実際に解体工事を行う都道府県ごとに解体工事業者登録が必要です。
ただし、土木工事業、建築工事業または解体工事業の建設業許可を受けている事業者は、解体工事業者登録の対象外です。
たとえば、請負金額300万円の解体工事は、建設業法上は軽微な建設工事に該当する可能性があります。しかし、土木工事業、建築工事業または解体工事業の建設業許可を持たずに解体工事業を営む場合は、原則として、解体工事を行う都道府県ごとの解体工事業者登録が必要です。
一方、1件の請負代金が消費税込みで500万円以上となる解体工事を請け負う場合は、解体工事業の建設業許可が必要です。解体工事業者登録だけでは、500万円以上の解体工事を請け負うことはできません。
浄化槽工事業については、原則として、浄化槽工事を行う都道府県知事の登録を受ける必要があります。
ただし、土木工事業、建築工事業または管工事業の建設業許可を受けている事業者が浄化槽工事業を営む場合は、登録ではなく、浄化槽工事業の開始届出を行う仕組みになっています。
「500万円未満だから手続は何もいらない」と判断せず、工事の種類ごとに関係法令を確認しましょう。
建設業許可が必要かを確認する5つの手順
判断に迷ったときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
何を完成させる契約か確認する
商品の販売だけなのか、設備の設置や建物の改修まで完成させる契約なのかを確認します。
該当する建設工事の業種を確認する
建築一式工事なのか、内装仕上工事、管工事、電気工事などの専門工事なのかを整理します。
1件の請負代金を計算する
契約書、注文書、見積書などから、1件の工事に関する金額を確認します。
消費税、支給材料、分割契約を反映する
消費税込みの金額に直し、発注者から支給される材料の市場価格を加えます。一つの工事を分割している場合は、原則として合計します。
許可業種と他法令の手続を確認する
すでに許可を持っている場合は業種が一致しているか、軽微な工事の場合は別の登録や届出が必要ではないかを確認します。
元請から許可取得を求められることもある
法律上は軽微な建設工事しか請け負わない場合でも、元請業者や取引先から建設業許可の取得を求められることがあります。
理由としては、次のようなものが考えられます。
- コンプライアンス体制を確認したい
- 将来的に500万円以上の工事を発注する可能性がある
- 取引先の登録基準として許可を求めている
- 工事の管理体制や技術者体制を確認したい
建設業許可を取得すれば、軽微な工事に限定されず、取得した業種について500万円以上の工事を請け負えるようになります。
そのため、現在は500万円未満の工事が中心であっても、将来の受注拡大や元請業者との取引継続を考え、早めに許可取得の準備を始めることには意味があります。
ただし、建設業許可を取得するためには、適切な経営体制、営業所技術者等、財産的基礎、社会保険への加入などの要件を満たす必要があります。
要件については、建設業許可を取るための2大ハードル|経管と営業所技術者等を分かりやすく解説もご確認ください。
判断が難しい工事は契約前の確認が大切
建設業許可が必要かどうかは、工事の名称や見積金額だけで簡単に判断できない場合があります。
特に、次のような場合は注意が必要です。
- 材料や機器の販売と工事を一緒に受注する
- 発注者から高額な材料を支給される
- 一つの現場で複数の契約書を作成する
- 複数業種が含まれるリフォーム工事を受注する
- 一式工事か専門工事か判断しにくい
- 常用契約や手間請けで工事に参加する
- 取得済みの許可業種で受注できるか分からない
契約を締結した後に許可が必要だと分かっても、すぐに許可を取得できるとは限りません。申請要件の確認、証明資料の収集、申請、行政庁の審査には一定の期間が必要です。
そのため、500万円前後の工事や、業種の判断が難しい工事の相談を受けた段階で、早めに確認することをおすすめします。
まとめ
建設業許可が必要かどうかを判断するときは、次の点を確認します。
- 建設工事の完成を請け負う契約か
- 建築一式工事か専門工事か
- 専門工事では税込500万円未満か
- 建築一式工事では税込1,500万円未満か
- 木造住宅工事の150平方メートル基準に該当するか
- 発注者から支給される材料を加算しているか
- 分割した契約を合計する必要がないか
- 取得済みの許可業種で対応できるか
- 別の登録や届出が必要な工事ではないか
建設業許可では、制度を守ることを前提に、工事内容や契約の実態に即して判断することが大切です。
私は、依頼者様のご希望を伺いながら、法令や行政庁の運用を確認し、実現可能な方法を一緒に考える姿勢を大切にしています。判断が難しい場合にはリスクを説明し、必要に応じて関係行政庁へ確認しながら進めます。
内倉厚行政書士事務所では、福生市・あきる野市・羽村市・青梅市・西多摩地域を中心に、建設業許可の新規申請、更新、業種追加、変更届などを支援しています。
「受注予定の工事に許可が必要か分からない」
「現在の許可業種で請け負えるか確認したい」
「元請業者から許可を取得するよう求められた」
このような場合は、契約前の早い段階でご相談ください。
許認可手続きでお困りの方へ
受注予定の工事に建設業許可が必要か、現在の許可業種で対応できるか判断に迷う場合は、契約前の早い段階でご相談ください。工事内容や契約の実態を整理し、必要な許可・登録・届出を一緒に確認します。
