公共工事の入札参加を目指す会社が最初に準備すること
公共工事への参入では、経審や入札参加資格申請の前に、自社の許可業種、技術者、工事実績、決算、納税、社会保険などの現在地を確認することが大切です。
「将来は市役所や東京都の工事を受注したい」
「民間工事だけでなく、公共工事にも仕事を広げたい」
このように考え始めたとき、最初に何をすればよいのでしょうか。
公共工事への参入というと、「経審を受ければよい」「入札参加資格を取ればよい」と考えがちですが、最初に行いたいのは申請ではなく、自社の現在の状態を確認することです。
公共工事への参入には、建設業許可、経営事項審査(経審)、入札参加資格申請など、複数の制度が関係します。
国や地方公共団体などが発注する一定の公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者には経審が必要であり、その後、希望する発注機関の入札参加資格や、個別案件ごとの参加条件を確認していくことになります。
ただし、公共工事への準備で最初に行いたいのは、すぐに申請書を作ることではありません。まず、自社の許可業種、技術者、工事実績、決算、納税、社会保険などの現在の状態を確認することが大切です。
そこで今回は、公共工事への入札参加を考え始めた会社が、まず確認しておきたい準備項目を7つに整理します。
「自社は7項目のうち、どこまで準備できているか」という視点で確認してみてください。
まず「どこの、どの工事を目指すのか」を決める
最初に考えたいのは、経審の点数ではありません。
自社がどの発注機関の、どのような工事を受注したいのかを整理することです。
例えば、次のような目標によって準備すべき内容が変わります。
- 福生市の道路工事
- あきる野市の施設修繕
- 羽村市の舗装工事
- 青梅市の建築工事
- 東京都が発注する工事
入札参加資格の制度や申請方法、格付け、個別案件の参加条件は発注機関によって異なります。東京都でも、競争入札参加資格や案件情報について東京都電子調達システムが運用されています。
したがって、「とりあえず経審を受ける」ではなく、「どの仕事を目指すために経審を受けるのか」という順番で考えることが大切です。
希望する工事に対応する建設業許可があるか確認する
次に確認したいのが、建設業許可の業種です。
建設業許可は29業種に分かれています。
例えば、舗装工事を受注したいのであれば舗装工事業、管工事を受注したいのであれば管工事業というように、許可が必要となる規模の工事を請け負う場合には、原則として、その工事内容に対応する許可業種を確認する必要があります。
経審についても、審査を受ける工事種類について対応する建設業許可を受けていることが前提です。
そのため、「建設業許可は持っているから大丈夫」ではなく、「将来受注したい工事の業種について許可を持っているか」まで確認する必要があります。
現在の許可業種と今後受注したい仕事が一致していなければ、業種追加を検討することもあります。
建設業許可29業種の考え方については、建設業許可は29業種|どの業種で申請するかを工事内容別に解説も参考にしてください。
決算変更届と経審の準備状況を確認する
公共工事を目指す会社にとって、毎年の決算は非常に重要な区切りになります。
建設業許可を受けた事業者は、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する必要があります。
そして経審を受ける場合には、この決算内容や工事実績が審査につながっていきます。東京都の経審でも、工事種別完成工事高、技術職員、財務関係資料など、多くの資料によって申請内容が確認されます。
つまり、公共工事を考え始めてから慌てて数字を整理するのではなく、次の資料や情報を毎年きちんと整理しておくことが重要です。
- 工事経歴
- 完成工事高
- 財務諸表
- 技術職員
- 契約関係資料
経審のX・Y・Z・W・Pや有効期間については、経営事項審査(経審)とは?X・Y・Z・W・Pと有効期間、公共工事までの流れを解説で詳しく解説しています。
また、決算変更届については、建設業許可取得後は毎年必要|決算変更届の期限・必要書類・未提出時の注意点もご確認ください。
税金の申告・納付状況を確認する
公共工事を目指す場合には、税金の申告・納付状況も確認しておきたい項目です。
入札参加資格申請や資格審査では、納税証明書などにより、申告・納付状況を確認する場面があります。
そのため、法人税、消費税、都税、市町村税などについて、申請先や制度に応じて必要となる税目を確認しておくことが大切です。
必要となる税目だけでなく、証明する対象期間や証明書の種類も異なります。具体的に必要となる書類は申請する発注機関や資格審査によって異なるため、実際の申請時には最新の公示・手引を確認します。
技術者と資格を「会社の資産」として整理する
公共工事では、会社にどのような技術者が在籍しているかが重要です。
経審のZ点、つまり技術力の評価では、対象業種ごとの技術職員数や元請完成工事高などが評価されます。
そのため、社員について、次のような情報を整理しておくことをおすすめします。
- 保有資格
- 資格取得日
- 実務経験
- 勤続状況
- 担当してきた工事
- 今後取得を目指す資格
資格証を会社の棚に保管しているだけでは、経営上の情報として十分とはいえません。
「土木施工管理技士が何人いるのか」
「舗装工事で評価できる技術者は誰なのか」
「今後どの資格を取得してもらう必要があるのか」
といった形で、会社として把握しておくことが重要です。
また、経審上の技術職員として評価されるためには、資格を持っているだけでなく、審査基準日前に6か月を超える恒常的な雇用関係があることなど、雇用状況についても確認する必要があります。
そのため、将来公共工事を目指すのであれば、「資格者が何人いるか」だけでなく、「いつから在籍しているか」「どの業種で評価できる資格なのか」まで整理しておくことが重要です。
なお、経審上の技術職員と、実際の工事現場に配置する主任技術者・監理技術者などは、それぞれ制度上の要件を確認する必要があります。個別の入札案件でも技術者に関する条件が設けられることがあるため、資格者がいるだけで全ての工事に参加できるわけではありません。
社会保険の加入状況を確認する
社会保険についても、公共工事を目指す段階で確認しておきたい項目です。
建設業では、事業所の形態や従業員の状況に応じて、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などへの適切な加入が求められています。
さらに、東京都の建設工事等競争入札参加資格では、加入義務がある事業者について、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入自体が申請条件となっています。
また、申請内容を確認する資料として、労働保険関係資料、雇用保険の資格取得関係書類、健康保険・厚生年金保険料の納入関係資料などが確認されることがあります。
「保険料を払っているから大丈夫」とだけ考えるのではなく、次の視点で確認しておくことが大切です。
- 自社が加入義務のある保険に加入しているか
- 従業員の資格取得・喪失手続きが適切か
- 保険料の納付状況を確認できるか
工事実績を証明できる状態にしておく
最後に、特に早くから取り組んでいただきたいのが、工事実績の管理です。
経審や入札参加資格申請では、「どのような工事を、いくらで施工したのか」という実績が重要になります。
そのため、次のような情報を工事ごとに整理しておくとよいでしょう。
- 工事名
- 発注者
- 工事場所
- 工期
- 請負金額
- 工事内容
- 元請・下請の別
- 対応する建設業許可の業種
さらに重要なのが、その内容を裏付ける資料です。
東京都の経審では、工事実績等の確認資料として契約書類などが求められます。また、東京都の入札参加資格審査でも、申請した完成工事経歴について、契約書や、契約書によらない場合には注文書・注文請書などが確認資料となります。
日常業務では、「工事が終わったから書類はもう使わない」と思ってしまうかもしれません。
しかし公共工事への参入を考える会社にとって、過去の契約書、注文書、請書などは、将来の申請で自社の実績を説明するための重要な資料になります。
工事が終わった時点で整理する仕組みを作っておくことをおすすめします。
公共工事への準備は「入札直前」から始めるものではありません
ここまでを整理すると、公共工事への参入を考え始めた会社が確認したいのは、次の7項目です。
- どの発注機関・工事を目指すのか
- 必要な建設業許可の業種があるか
- 決算変更届・経審の準備ができているか
- 税金の申告・納付状況に問題がないか
- 技術者・資格を整理できているか
- 社会保険の加入状況は適切か
- 工事実績と証明資料を管理できているか
これらは、入札公告が出てから一度に整えるものではありません。
特に、工事実績や技術者、決算内容については、短期間で変更できない部分もあります。
そのため、「来月公共工事を取りたいから準備する」のではなく、「1年後、2年後に公共工事へ参入するために、今から会社の状態を整える」という考え方が重要です。
公共工事を受注するまでの全体的な手続については、公共工事を受注するには|建設業許可・経審・入札参加資格申請の流れを解説で詳しく整理しています。
まずは「現在地」を確認するところから始めます
私は39年間の行政実務を経験する中で、行政手続では、期限が迫ってから対応するよりも、現在の状況を整理し、必要な手続きを順番に進めることが大切だと考えてきました。
公共工事への参入についても同じです。
いきなり入札参加資格申請をするのではなく、次の点を一つずつ確認していくことが、無理のない進め方だと思います。
- どの工事を目指したいのか
- 今の会社には何がそろっているのか
- これから何を準備する必要があるのか
公共工事への参入が、すべての会社に適しているわけではありません。
会社の規模や技術者の状況、工事実績、経営状況などによっては、すぐに入札参加を目指すより、まず社内体制や実績を整える方がよい場合もあります。
大切なのは、制度に会社を無理に合わせることではなく、会社の現在の状況と今後の目標を確認したうえで、必要な準備を進めることです。
まとめ|公共工事を目指すなら、会社の状態を7項目で点検する
公共工事への入札参加を考え始めたら、最初に申請書を作る必要はありません。
まず確認したいのは、次の項目です。
- 目指す発注機関と工事
- 建設業許可の業種
- 決算と経審
- 納税状況
- 技術者
- 社会保険
- 工事実績
これらを整理したうえで、一般的には、必要な建設業許可を確認し、決算変更届、経営状況分析、経営事項審査、入札参加資格申請という流れを見据えて準備します。
福生市・あきる野市・羽村市・青梅市をはじめ、西多摩地域周辺で、次のように感じている場合には、まず現在の許可業種、技術者、工事実績、決算状況などを整理するところからご相談ください。
- 将来、公共工事へ参入したいが何から始めればよいか分からない
- 建設業許可は持っているが、経審を受けたことがない
- 現在の会社の状態で入札を目指せるのか確認したい
内倉厚行政書士事務所では、建設業許可、経営事項審査、入札参加資格申請などについて、現在の状況と今後の希望を確認しながら、必要な手続きを一つずつ整理していきます。
建設業許可・経審・入札参加資格申請のサポート内容もご確認ください。
許認可手続きでお困りの方へ
公共工事への入札参加を見据える場合は、建設業許可の業種、経審、決算変更届、技術者、工事実績などを早めに整理しておくことが大切です。現在の状況を確認しながら、必要な手続きを一つずつ進めていきましょう。

