個人事業主でも建設業許可は取得できる?法人との違い・要件・法人成りを解説
個人事業主や一人親方でも、建設業法上の要件を満たせば建設業許可を取得できます。法人との違い、法人成り、事業承継、許可取得後の届出まで整理します。
個人事業主でも建設業許可は取得できます
内倉厚行政書士事務所の内倉 厚です。
福生市・あきる野市・羽村市・青梅市をはじめ、西多摩地域で建設業を営む個人事業主や一人親方の方の中には、「法人でなくても建設業許可を取れるのか」「許可を取るためには、先に会社を設立しなければならないのか」と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から申し上げると、個人事業主でも、建設業法上の要件を満たせば建設業許可を取得できます。建設業許可を取るために、必ず法人を設立しなければならないわけではありません。
ただし、個人事業主と法人とでは、申請者、提出書類、財務諸表、許可取得後の変更手続、法人成りや事業承継の取扱いなどに違いがあります。法人化するかどうかは、許可申請だけでなく、今後の事業規模、取引先、従業員の雇用、事業承継なども含めて判断する必要があります。
私は、39年の行政経験を通じて、制度を正確に確認することと、相手の事情を丁寧に伺うことの大切さを学んできました。建設業許可についても、初めから法人化を前提とするのではなく、現在の事業形態や将来の希望を踏まえて検討することが大切だと考えています。
法人化していないことだけで諦める必要はありません
建設業法は、建設業許可の申請者を法人に限定していません。個人事業主であっても、法人と同様に、許可を受けたい建設業種について必要な要件を満たしていれば申請できます。
次のような理由だけで法人化する必要はありません。
- 一人で事業を営んでいる
- 従業員を雇っていない
- 法人を設立していない
- 屋号で営業している
重要なのは、法人か個人かという形式ではなく、建設業法が定める許可要件を満たしているかどうかです。
許可を取得すれば、許可を受けた業種について、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負うことができるようになります。軽微な建設工事とは、原則として、建築一式工事以外では1件の請負代金が税込500万円未満の工事をいいます。建築一式工事には別の基準があります。
許可が必要かどうかは、工事の分割、材料費、消費税、元請・下請の別なども含めて判断する必要があるため、契約前に確認することが大切です。
個人事業主が建設業許可を取るための主な要件
個人事業主と法人とで、許可の基本的な基準が大きく変わるわけではありません。一般建設業許可を例にすると、主に次の点を確認します。
建設業の経営管理を適正に行える体制
建設業許可では、建設業の経営を適正に管理できる体制が求められます。一般的な申請では、個人事業主本人に、建設業について一定期間の経営経験があるかを確認します。
代表的な基準は、建設業に関して5年以上、個人事業主、法人の役員などとして経営業務を管理した経験があることです。ここで必要なのは、職人や従業員として現場で働いた経験だけではなく、事業主や役員などとして建設業の経営に関わった経験です。
現在の法令上の正式な表現は「経営業務の管理責任者」という単独の役職だけではなく、常勤役員等を中心とした経営管理体制となっています。常勤役員等とは、法人では常勤の役員、個人事業主では本人や登記された支配人などを指します。
過去の確定申告書、請負契約書、注文書、請求書、入金記録などが確認資料になることがありますが、必要となる資料や確認方法は申請先の行政庁によって運用が異なることがあるため、事前確認が重要です。
営業所技術者等を置くこと
建設業許可を受ける営業所には、許可業種について一定の資格や実務経験を持つ「営業所技術者等」を置く必要があります。営業所技術者等とは、見積り、入札、契約など、営業所で行う建設工事の請負契約を技術面から支える人です。
以前は「専任技術者」や「専技」と呼ばれていましたが、現在は法令上「営業所技術者等」という名称が使われています。
- 対象業種に対応する国家資格を持っている
- 指定学科を卒業し、必要な実務経験がある
- 対象となる建設工事について原則10年以上の実務経験がある
- 一定の施工管理技術検定に合格し、所定の実務経験がある
一人親方や個人事業主の場合、事業主本人が経営管理の要件と営業所技術者等の要件を両方満たすケースもあります。ただし、資格の種類によって担当できる建設業種が異なります。
実務経験による申請では、経験した工事の内容と期間を資料で確認できることが必要です。単に「長年、建設現場で働いてきた」というだけでは足りず、許可を受けたい業種に該当する工事を、必要な期間経験したことを確認します。
請負契約について誠実性があること
申請者が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことも必要です。不正な行為とは、詐欺、脅迫、横領などの法律に反する行為をいいます。不誠実な行為とは、工事内容、工期、天災などによる損害の負担について、契約に違反する行為などをいいます。
個人事業主の場合は、原則として事業主本人の状況を確認します。支配人や営業所の代表者を置いている場合には、その方も確認の対象になることがあります。
財産的基礎または金銭的信用があること
一般建設業許可では、請負契約を履行できる財産的な基礎があることも求められます。
- 自己資本の額が500万円以上ある
- 500万円以上の資金を調達できる能力がある
- 許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して建設業を営業していた実績がある
個人事業主の新規申請では、申請時の財務内容によっては、金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書などを提出する方法があります。これは行政庁に500万円を支払うという意味ではありません。
なお、特定建設業許可には、一般建設業許可よりも厳しい財産要件があります。
欠格要件に該当しないこと
申請者が建設業法に定める欠格要件に該当しないことも必要です。欠格要件とは、一定の事情がある場合に許可を受けられないとする条件です。
- 破産手続開始の決定を受け、復権していない
- 建設業許可を取り消されてから所定の期間を経過していない
- 一定の刑に処せられてから所定の期間を経過していない
- 暴力団員または暴力団員でなくなってから所定の期間を経過していない
- 暴力団員等が事業活動を支配している
欠格要件の対象者は、個人事業主本人だけとは限りません。支配人や営業所の代表者などを置く場合には、その方も対象になることがあります。
必要な社会保険に適切に加入していること
現在は、適用事業所に該当する場合、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について必要な届出をしていることも許可要件です。
ただし、一人親方や従業員のいない個人事業所では、保険の種類によって適用対象外となることがあります。個人事業主本人や同居の親族だけで事業を行っている場合、雇用保険は原則として適用対象外です。従業員を一人でも雇用している場合は、原則として雇用保険の適用事業となります。
社会保険の適用関係は、従業員数、業種、雇用形態などによって異なるため、年金事務所やハローワークへの確認が必要になることがあります。
個人事業主と法人では何が違うのか
個人事業主も法人も基本的な許可要件は共通していますが、申請や許可取得後の取扱いには違いがあります。
申請者が異なります
個人事業主の場合、許可を受けるのは事業主本人です。法人の場合、許可を受けるのは株式会社や合同会社などの法人です。そのため、個人事業主が法人を設立して事業を移す場合、個人と法人は法律上別の事業者として扱われます。
単に会社を設立しただけで、個人名義の建設業許可が自動的に法人へ移るわけではありません。
提出書類や財務諸表が異なります
個人事業主と法人では、申請書の一部や添付書類が異なります。個人事業主では、個人事業主本人に関する証明書、個人用の財務諸表、所得税に関する納税証明書、確定申告書、経営経験や実務経験を確認する資料などを用意します。
法人では、これらに対応する書類のほか、登記事項証明書、定款、法人用の財務諸表、法人税に関する納税証明書などが必要になります。ただし、申請区分、営業所の数、役員構成、支配人や営業所代表者の有無などによって必要書類は変わります。
東京都では申請書類や確認資料の取扱いが変更されることもあるため、申請時点の手引を確認する必要があります。
代表者変更と事業主変更の扱いが異なります
法人の建設業許可は、法人そのものに対して与えられます。そのため、株式会社の代表取締役や合同会社の代表社員が交代しても、法人が存続し、許可要件を維持していれば、通常は代表者変更の届出によって対応します。
一方、個人事業主の許可は、その事業主本人に対して与えられます。家族や従業員が事業を引き継いだからといって、届出だけで許可名義を変更できるわけではありません。
ただし、現在は、一定の条件の下で、事業譲渡や相続について建設業者としての地位を承継できる認可制度があります。事業譲渡の場合は原則として承継前に認可を受け、個人事業主が死亡した場合の相続では、死亡後30日以内に認可申請を行う制度が設けられています。承継する側も許可要件を満たす必要があります。
「個人事業主の許可は絶対に承継できない」とする説明は、現在の制度では正確ではありません。事業承継や法人成りを予定している場合は、実行日より前に許可行政庁へ相談することが重要です。
建設業許可のために法人化する必要はあるか
建設業許可を取ることだけが目的であれば、個人事業主のまま申請することも可能です。法人化が適しているかどうかは、許可要件とは別に、経営全体から判断する必要があります。
個人事業主のまま申請することを検討しやすいケース
- 現在の事業規模を大きく変える予定がない
- 主に一人または少人数で事業を続ける
- 取引先から法人化を求められていない
- 法人の設立費用や維持管理の負担を増やしたくない
- 当面、事業承継の予定がない
西多摩地域では、長年築いてきた地域の取引関係を大切にしながら、個人事業主として事業を続けている方もいらっしゃると思います。法人でないことだけを理由に、建設業許可を諦める必要はありません。
法人化も含めて検討した方がよいケース
- 従業員を増やして事業を拡大したい
- 取引先から法人との契約を求められている
- 将来、家族や従業員に事業を引き継ぎたい
- 複数の経営者や出資者で事業を行いたい
- 個人の財産と事業上の財産を分けて管理したい
ただし、法人化すれば必ず信用が高まる、融資を受けやすくなる、税負担が軽くなるとは一概にいえません。金融機関や取引先の判断は、事業内容、業績、財務状況、取引実績などを含めて行われます。また、税務上の有利・不利は、所得額、役員報酬、社会保険料などによって変わります。
法人化の税務面については、税理士などの専門家に確認したうえで判断することが適切です。
個人で許可を取った後に法人成りする場合の注意点
「まずは個人事業主として許可を取り、事業が拡大した後に法人化したい」と考えることもあると思います。この方法自体は可能ですが、注意したいのは、法人を設立しただけでは個人の許可が法人へ自動的に引き継がれないことです。
法人成りとは、個人事業を法人組織へ移行することをいいます。現在は、個人事業主から法人への法人成りについても、建設業に関する事業の全部を譲渡する場合、事前認可制度を利用できる可能性があります。
事前に確認したい主な点は次のとおりです。
- 個人から法人へ建設業の事業全部を譲渡すること
- 法人側が経営管理、営業所技術者等、財産要件などを満たすこと
- 認可申請の時期
- 個人と法人で許可業種や一般・特定の区分に相違がないか
- 許可を受けていない業種を含めてどのように事業を移すか
条件によっては、承継認可ではなく、法人による新規許可申請が必要になることもあります。法人成りの日を先に決めてしまうと、許可を必要とする工事を請け負えない期間が生じるおそれもあるため、早めの準備が大切です。
個人事業主の建設業許可申請の流れ
実際に請け負っている工事や今後請け負いたい工事が、建設業の29業種のうち、どの業種に該当するかを確認します。工事名や見積書の名称だけでなく、実際の施工内容によって判断します。
経営経験、営業所技術者等、財産的基礎、社会保険、営業所の実態などを確認します。特に経営経験と実務経験は、必要な年数があるだけでなく、その期間を書類で確認できるかが重要です。
申請書に記載するだけではなく、経験や常勤性などを確認できる資料を用意します。東京都では、請求書などで実務経験を確認する場合、工事内容が対象業種に該当することや、入金の事実を通帳などで確認できることを求められる場合があります。
保存している書類が少ない場合でも、直ちに申請できないと決まるわけではありません。どの資料が利用できるかを整理したうえで、必要に応じて行政庁に確認します。
要件と資料が確認できたら、申請書、財務諸表、工事経歴書、営業所に関する書類などを作成します。東京都知事許可の場合、窓口、郵送または電子申請による方法があります。
東京都知事許可では、申請書が正式に受け付けられてからの標準処理期間は、土日祝日などの閉庁日を除いて25日とされています。書類の補正や追加資料の提出が必要になった場合は、それ以上の期間がかかることがあります。
許可取得後も届出や更新が必要です
建設業許可は、取得した後も一定の手続が必要です。主なものは次のとおりです。
- 毎事業年度終了後の決算変更届
- 商号、営業所、事業主の住所などを変更した場合の変更届
- 営業所技術者等を変更した場合の届出
- 社会保険の加入状況を変更した場合の届出
- 5年ごとの更新申請
個人事業主の場合、法人のような役員変更はありませんが、営業所技術者等や営業所所在地などに変更が生じることはあります。また、所得税の確定申告を済ませただけでは、建設業法上の決算変更届を提出したことにはなりません。
決算変更届は、毎事業年度終了後4か月以内に許可行政庁へ提出する必要があります。許可取得時から、その後の届出や更新までを見通して書類を管理しておくことが大切です。
個人事業主の建設業許可は事前確認が大切です
個人事業主や一人親方であっても、要件を満たせば建設業許可を取得できます。法人化していないという理由だけで、許可取得を諦める必要はありません。
申請前には、次の点を確認する必要があります。
- 建設業の経営経験を証明できるか
- 許可業種に対応する資格または実務経験があるか
- 経験を確認できる契約書、注文書、請求書などが残っているか
- 財産要件を満たしているか
- 必要な社会保険の届出をしているか
- 将来の法人成りや事業承継をどのように考えているか
建設業許可では、「経験はあるが、どの資料で証明するか分からない」ということも考えられます。そのような場合も、まずは手元にある資料を確認し、申請の可能性を一つずつ整理することが大切です。
内倉厚行政書士事務所では、福生市・あきる野市・羽村市・青梅市をはじめ、西多摩地域の建設業者様が、許可手続に対する不安を減らし、本業に集中できるよう支援したいと考えています。
私は39年の行政経験を通じて培った、相手の話を丁寧に伺い、制度や資料を一つずつ確認する姿勢を大切にしています。
無理に法人化を勧めるのではなく、個人事業主のまま申請できる可能性、法人成りを検討する場合の注意点、将来の事業承継まで含めて、現在の状況に合った方法を一緒に考えます。
許認可手続きでお困りの方へ
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